2012.12.21
何歳から生ものを食べさせて良いか。
消化管の成熟が免疫能を含め完成するのは10歳前後です。加熱(十分な)すると、食品に潜む細菌やウイルスは死滅し、抗原性が高い糖タンパク等は変性しより安全になります。ビタミンは減少しますが、常識範囲内の通常量の食品を摂取していれば不足になることはありません。上記を勘案すると「10歳までだめ」という事になりますが、寿司文化の日本では少し現実的ではありません。また子どもはいつも健康状態とも限りません。種々の理由で抵抗力が低下している時は症状も出やすく、実際、下痢の後は腸管の透過性が亢進し、腸管の未熟な子どもは食物アレルギーになりやすいことが知られています。つまり同一の人でもある時は「不可」で、ある時は「可」ということがあります。
100%の安全を希求すれば、食べてはいけないし、ほんの少し危険を犯せば、おいしい物を食べる事ができるし.....。最後は自己責任という事になりますが、子どもは与えられた物を食べますから、自分で判断できません。むずかしいです。
世の中、こんなことばかりです。ワクチン接種も同じです。ワクチンは自然感染より断然安全ですが、非常に少ないですが、副反応のリスクもあります。
質的に連続性のある集団、物(スペクトラム)に線を引き、2分するということは本当に難しいことです。今回の主題である「何歳から」という問いには、「専門家」として問われれば、「10歳から」とお答えしなくてはなりません。一方「経験を積んだ成熟した大人(私、家に帰ればうるさいただのおっさんです)」として問われれば、食品衛生の進んだ我が国では(一部の例外が時折報道されますが)、そこまで厳格にする必要もなさそうです。
しかし、外来では子どもには「生肉、加熱不十分は鶏肉、生卵、下痢が治っていない時期の生もの一般」、これは食べてはいけないとお答えしています。
お正月休みに入り、多くのお子さんがご自宅、ご両親の実家、旅行先で過ごされると思いますが、この辺りもご留意ください。以前すこやか通信で以下のようにお伝えしましたが、大人のおいしい物はお気をつけ下さい。「古人いわく:子どもに旨いものを食べさすなと:「贅沢させるな」の意味と、大人に旨い物は子どもに危険で有害な可能性がある事を示唆しています。隠し味=何が入っているか判らない。新鮮または生もの=寄生虫、細菌。微妙な味わい=抗原性があったり銀杏のように実際毒物を含有。焼き鳥=ビールに合いますが、キャンピロバクタ腸炎は有名。」