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2014.04.03

子供の行動原理 子供をよく理解するために

子供の行動原理 子供をより理解するために

 HP改変の機会に、お母さん方の子供の理解の助けに成る事を期待して書いてみました。一部持論も入っていますが教科書的記載と矛盾は無いと思います。
 外来で多くの相談をお受けします。数分で終わる場合や20分以上かけてお話する場合もあります。一般に我々が1分間で話す文字数は400字と言われています。原稿用紙1枚分です。このメモは6000字、原稿用紙15枚分で、時間にすれば約15分間強のお話です。お母さんとの問答を加えると、診察室での約20-25分間の話と考えてください。文章は散文的で、会話にありがちな論理の飛躍がありますが、紙面の都合で込み入った所は省略した結果とお考え下さい。実はこのメモを同僚の女医さんに読んでいただきました。感想は「先生。確かにそうですけど、お母さん方はもっと別の世界で子育てしてますよ。」でした。「ガ-ン!」です。まあ少し長いですが批判的に読んでください。
 
はじめに
 子どもには「2つの本能」があると考えて下さい。その上で発達を「6つの要素(視点)」から見ると子供の行動がわかりやすいと思います。
 まず本能として(1)母親を独占したい(2)親からほめられたいという二つの欲求です。発達の要素は(a)母からの独立(b)我慢力の発達(c)感情の分化(d)思考論理の成熟、(e)時間感覚の長期化 (f)個人差 で、この視点から子供の発達を見ていただき、より理解を深めるための一助となる事を期待しています。

(1)子どもの本能について
 子どもは誇り高い生き物です。そして子供の持つ強力な「生得のもの(アプリオリ)」は「生きたい!」というものです。しかし絶対的弱者である子供は自分で住居や食料等を確保できないため、大人の保護が必要です。そのためこの生得的なものは「生きたい!」から「生存を保障してほしい」と言う形に変わります。人類には小児期に、この強烈なエネルギーがあるからこそ、種の保存がなされてきたと言っても過言ではありません。生きる欲望が少ない子供を持つ種は、成人になる個体が減少し、結果的に滅びてしまいこの地球上に存在していません。
 この子供の「生存を保障してほしい」という生得的欲求は、1)母親を独占したい(2)親からほめられたい、という二つの「本能」として表出します。母親を独占したいという欲求は、母という一人の成人の育児資源を全部自分に向けさせたいという形を変えた欲求であり、ほめられたいという欲求は、親の価値観に自分を合致させる事で、より生存を保障されたいという欲求に他なりません。「その社会の伝統や規範に従順であろうとする子どもは、(反抗的な子どもより、)その社会での生存が保障される」という原則があります。つまり「従順である」、換言すると「素直である」事は生き抜くための戦略として有効です。そして母親の「この子は生きぬいてほしい」という欲求と合致しより強固な親子関係が成立します。
 また本能は充足されなくてなりません。この本能が充足されない子供は、所謂「欲求不満」になります。子供は自分の思いを表現する語彙が少ないため、この欲求不満を身体症状で表現します。この身体症状の多くは腹痛、頭痛などが多く、本人にしか判らないため、対応に苦慮する場合があります。時にこれらは不定愁訴として表現されています。このように子どもが、主観的症状(注)を断続的に訴えた時は要注意です。
 子供は無条件に「自分は愛されるに価する存在であると」確信しています。一方「本能は経験によって削られ、修飾されます」。この前提に反する経験が積み重なると子供の確信は動揺します。その結果、円満な本能が削られいびつな「本能」を持つようになります。最大の修飾因子は親子関係です。円満な人格にはそのコアの部分にバランスのとれた本能が必要ですから、良好な親子関係は非常に大切です。
(健やか通信から:1。「うちの子は喜んで塾に行ってます!」という場合、本当に喜んで行っている場合と、喜んで行く事で褒められたいという場合があります。2.子供の親への殺し文句:グレてやる!。死んでやる(引用)です。)
(注)主観的症状:本人しか判らない症状例頭痛や腹痛等、対語が客観的症状で、他者にも判る症状、例下痢、嘔吐,咳、熱等)


(2)5つの要素 
(a)母からの独立
 昔から子育ての経験則として言い伝えられている言葉があります。「赤子には体を離すな、幼児は手を離すな、子どもは眼を話すな、青年は心を離すな」、「乳児期は甘やかし、幼児期は躾、少年期は教え、思春期は考えさせろ」という言葉が象徴的にそれを表しています。前者は母からの視点で、後者は社会的視点で「母からの自立」を表しています。一方子どもの立場から見れば、肌でお母さんの存在を確認し、手で確認し、眼で確認し、心で確認するという成長のパターンを示していることになります。順番が大切で、乳児期に躾けてもだめですし、反抗期にある思春期に教えようとしても拒否されるだけです。
 子どもの成長には母親との「共同作業」という側面があります。つまり母親も同時に成長していかなければならない訳です。8歳の子どもには「8歳の子どもの母親」が必要で、「8歳の子供に「3歳の子どもの母親のまま」の母親」では子どもの成長の阻害する可能性があります。親離れと子離れの話です。

(b)我慢(力)の発達
 我慢力の発達を医学的表現にすれば、「抑制系の発達」ということができます。生命は多くシステム(臓器)が複雑に絡み合いそして調和して維持されます。全体を良好に作動させるためには個々の要素をコントロールすることが必要で、ある系は抑制し、ある系は促進し調和させていきます。
 子どもはこの抑制系が未熟なため、子ども独特の行動や病気があります。行動面からみると、何か興味があるものを見ると回りも見ずパッと飛びつきます。ウロウロします。しかし大きくなると周囲の状況を見て判断し、興味があっても飛びつきたい衝動を抑えることができるようになります。
 また、成人にはほぼ無くなりますが、身体的な面で夜尿症に例にとりあげます。その機序は膀胱が不随意(勝手に)に排尿反射(膀胱収縮)を起こす事により夜尿をしますが、一方正常の場合は高位から(この場合脳から)抑制の信号が送られ、夜尿しません。成長に従いこの抑制の指令が成熟し夜尿は改善します。
 精神面では、ちょっとした刺激ではぐっと我慢し泣かなくなります。これは予防接種時によくわかります。4種混合の時期は泣きわめいていた子供が、日本脳炎やMRワクチン2期の頃にはグット我慢し泣かなくなります。また待つ事もできるようになり、お母さんから注意されればおとなしくなります。これらすべて我慢する力が発達してきた事を示します。この力は成長に伴い自然に発達しますが、練習や訓練が必要であることは言うまでもありません。

(c)感情の分化と語彙の増加
 生まれてきた赤ちゃんはまず快:不快で泣き、周囲に自分の存在を示しかつ養育を要求します。あやせば笑うように、喜怒哀楽と思われるような表情や行動を示します。その頃母親との愛着が成立し、母親との感情や注意の共有ができます。また楽しさ、期待、恐怖、不安、などなど多くの豊かな感情をしめすようになります。   まるで土に播かれた「種(タネ)」が発芽し、まず2枚の葉っぱが出てきて、それがさらに4枚にまたさらに枝葉が増えて行くようにイメ-ジできます。そして大きな幹を持つ大木を想像してください。その一枚一枚が「ある感情」と考えてください。
 最近感情を表す語彙が少なくなりました。心の動きの機微を表現するにはそれにふさわしい沢山の言葉が要りますが、その言葉が少なくなった訳です。
 最近「ヤバイ」という言葉がよく使われています。良い時も悪い時も「ヤバイ」一言で済まされています。まるで犬のしっぽ振り見たいです。犬は、嬉しい時(回し気味)、緊張している時(小刻み)に、親愛を示す時(ゆっくり)に、しっぽを振りますが、なにかそれと一緒のような気がします。ヤバイ!。ヤバーイ。の違いはあるかも知れませんが、単にその人が興奮もしくは緊張状態にあることを表しているだけです。本来なら喜怒哀楽を表現する言葉があったはずです。
 少し脱線しましたが、成長とともに快、不快で泣くだけであった赤ちゃんが、楽しかったり、悲しくなったり怖くなったりするように種々の感情が発達していきます。この時期、絵本の読み聞かせは大切です。子どもの心に沸き起こる種々の感情をその対になる言葉とともに正確に教えて行くには、絵画的場面とそれを支える物語(文脈)が必要だからです。語彙は重要で、自分の気持ちを他者に言葉で正確に表現できることにつながります。伝え聞いた話ですが、ある施設で問題行動の多い子供に担当者が「今の気持ちを言ってごらん」と言うと「わからん」と言いました。担当者は「嘘と思うでしょうけど本当に判らんみたいでした」と報告したそうです。この子は自分の感情を表現できる言葉を知らなかったと思われ、パッションのみで内的生活を送っていたことになります。
 直感的に「情感」が先にあってそれに対応する「言葉」が作られると思いますが、言葉が先にあってその言葉に対応する情感が形成されるという説があります。もしこの説が正しければ、語彙が少ないと情感は原始的なもので止まることになります。
 複雑な思考には豊富な語彙が必要です。

(d)思考論理の成熟
 子どもの思考は未熟です。大人では考えられないような考え方をします。良い例ではありませんが、理解のための一例を上げます。「ある犬にいつもしつけのために怒り調子でその犬の名、例えば「ポチ!」と呼んでいると、犬は飼い主に「ポチおいで」と呼ばれた時、「ポチ」=怒られる!と理解し、名を呼ばれると逃げる」という話があります。当然飼い主は名を呼んだ時は足下に来ることを意図しています。
 つまり、大人の成熟した論理で子どもを説得しても、子どもは別の理解をする可能性があること、また理詰めの詰問的叱責をしても子どもには理解させることは難しいことを留意する必要があります。
 「乳児期は甘やかし、幼児期は躾、少年期は教え、思春期は考えさせろ」という教訓を前述しましたが、この教訓はまたその順番が大切なことが強調されています。思春期の説教調の指導は拒否される場合が多く効率的ではありません。大切なことは、少年期に社会の規範や伝統的価値観や考え方を教えておくことで、その場合大人が実際に行うことや、大人の体験を語ることが重要です。この時期理屈より模範を示すことのほうが教育効果は高いことは周知です。
 最近、理解不能な少年の犯罪が報道されます。しかし少年本人には「彼自身の合理性」があった訳ですが、そこに思考の未熟性、我慢力の未熟性、後述する時間感覚の未熟性が露呈されているように思います。
 「個人の内的世界」の発達というもののイメージは、「1本の大木があり、それを経験というノミで削り、また環境という絵の具で飾り、一つの仏像などの彫像を完成する」というものです。この彫像の素材となる大木の形、大きさ等はある程度遺伝的に規定されます。しかしより重要なのは少し曲がった木のその湾曲を利用したすばらしい彫り物があるように、個性ある素材を生かしてくれる経験や環境であることは言うまでもありません。
 番外編:クジャクの羽は何のためのあのように大きく派手なのか。メスの気を引くためと言われていますが、進化論的な理解は「ハンデーキャップ理論」というものです。メスに対し「俺はこんな無駄な、そして鷲など外敵から逃れるのに不利な羽(ハンデーキャプ)を持っているが、でも生きている!。だから俺は強いんだ!」というアピールだそうです。個人的見解ですが「子供が親に無理難題を要求する事」もこの理論で理解できるような気がしています。「こんな事をいう僕でもお母さんは無条件に僕を愛している」というものです。母親の愛情の確認作業です。もしそうであれば、親は子供から試されていることになります。
(e)時間感覚の長期化
  「子供の頃、夏休みが限りなく長く感じました。しかし30才も過ぎると1か月はすぐ過ぎます。6才の1年は人生の1/6。30才の1年は人生の1/30。同じ1年でも子どもは大人より5倍も長い訳です。大人にとっての1日は子どもにとっては5日間です。親から丸1日叱られる事は5日間怒られ続けられたのと同じ。夫婦でも5日間のねちねちは滅入ります。叱る時くどくど言わないのはこんな理由(すこやか通信既報)。
 このように時間感覚は大人と子どもではかなり異なる事を留意する必要があります。人は過去の自分を引き受けて今の自分があり、また現在の自分を基に未来の自分を考えます。未来の予測は過去の経験の組み合わせという言葉がありますが、過去の経験が絶対的に少なく、奥行きの浅い過去しか持たない子どもにとって未来予測は苦手です。「こんな事をしたらどうなるか判るでしょう!」という叱責は子どもには説得力ありません。
 成長するに従い、経験を積み少しづつ時間感覚も大人に近くなってきます。少し脱線しますが、子どもがすぐにばれる嘘をついたり、約束を破る時は、その子の精神状態はギリギリです。大概親の怒り過ぎの様な気がします。大人も同じで、今を乗切るのが精一杯の時は10年先を考えた意思決定はしません。

(f)個人差について
 推理力、記憶力、理解力等にはある程度個人差があります。記憶力の発達は早いが、理解力の発達の遅いというように発達は一様ではなく、到達点はほぼ同じでもそこに到達する時期は個人差があります。「少年期は天才、青年期は秀才、成人ではただの人」というような例え話がありますが、如実にこの発達の個人差を表しています。当然遺伝的要因もありますが、やはり「玉も磨かねばただの石」ですから、環境、経験、別の角度から言えば「努力」「精進」が大切なことは言うまでもありません。運動能力、生活力、社会性、音楽性、などなど人の個性を規定する因子は沢山あります。それぞれの能力に個人差があり、その雑然性こそがこの社会を楽しくしてくれている訳です。
 個人差は社会生活に支障がなければ個性とされ、社会生活に支障があればそれは病的として治療対象になったりします。ある「問題行動」を取り上げ個性か病的かを考える時、成熟し生得の能力に到達している成人はある程度評価できますが、子供は発育速度にも個人差がある訳ですから非常に判断が難しいです。専門家の見解もよく別れます。お子さん行動等が気になった時は複数の専門家の意見を参考に意思決定してください。

(4)最後に
 ある著明な小児科医からお聞きした話です。育児の極意は「自分の子供を信じて待つ事」「信頼をして待ってやる事」だそうです。
 長々と述べましたが、論理の飛躍もあります。判らない点があったら、外来が暇な時に聞いてくださいネ。               小國龍也


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