2014.07.28
まずお父さんお母さんご自身の問題として考えてください。ある目上の方からご自身が詰問調で責められた場合を想定してください。その「事案」についてはご自身にも責任があり「責められても仕方がないな」という前提です。こんな状況を乗切る方法を、ご自身の理想ではなく現実として考えて下さい。
まず第1案は「素直に謝る」ただしその後の執拗な更なる叱責や罰(ゲーム機の没収など)が課されることが経験的にわかっています。決して「ワシントンの桜の木 注1」の様にはいきません。第2案は黙秘する。この場合反抗的態度として罵声、怒号、時に暴力(頭を平手でバシッ)も覚悟する必要があります。「本当の事を言えと母親に叱られ、本当の事を言ったらもっと怒られた」という事態も考慮する必要があります。第3案「よく覚えていない(よく覚えていても)」という。
大人の社会では、現実問題としてその後の社会生活や家族などなど考慮すると、第1案,よほどの事で第2案しかないことは判っています。第3案という「悪魔のささやき」のような解決法は、社会的経験が豊富な大人には、1回しか有効でないことや、連発するとその後心理検査など種々の医学的検査や自分には関係なさそうな検査を時に延々と受けなくてはならない可能性や、自由な行動を制限される可能性がある事が判っています。では社会的経験が絶対的に少ない子どもはどのような選択行動をするとお思いになりますか?
お答えになる前に以下の事実を考慮に入れてください。進化心理学の話です。ライオンは哺乳類の中では決して知能が高い動物ではありませんが、数学的認知能力がある事が知られています。数が多い少ないという概念はあるそうです。おいしそうな餌になる動物がいても数が多いとひるむらしいです。しかし飢えている時はまた違った行動原則があり、統計的合理性のある行動をするらしいです。
次に子どもの思考の特徴は「ワ-キングメモリ-:時間距離とも言えます:」が短いというものです。大人は今現在考えていることと将来(明日、10年先など長い時間)の行動や思考は連続し、成熟するとより遠い将来の事も考慮に入れて行動します。思考の時間距離は長い訳です。一方子どもは幼ければ幼い程この時間距離が短くなり、「今」を重視した選択行動をします。
要約すると子どもは、子どもなりに選択行動をする能力があり、その場合は将来の事まで考えて行動しない事、そして一番大切なこともかも知れませんが、人間を含め動物というものは追いつめられれば追いつめられる程本能的直感的に行動するという事を考慮にいれてください。
結論は、「追いつめられた子どもは(本能的に)3案を選択します」です。
長々と書きましたが、「なぜこんなアホなことをしたんや!」と怒っても子どもから「わからん」と言われれば、大人は次の言葉を失います。少なくとも詰問調の叱責はできません。子どもが「わからん」「忘れた」を連発した時は、子どもは追いつめられ、「心のエネルギー 注2」は枯渇しており、その後の忍耐が必要な第1案は選択できないという事をお父さん、お母さんは頭の片隅において下さい。
注1) アメリカ初代大統領ジョージ ワシントンの桜の木の逸話:ワシントンが少年時代父親の大事な桜の木を切ってしまったが、正直に自分がした事を打ち明け、父親に正直な答えは桜の木より価値があると褒められた話です。我々の世代はよく聞かされました。
注2) 当院HP一口メモ参照。