2018.11.27
ゲーム障害
WHO(世界保健機構)が先日、国際疾病分類(ICD-11を公表しました。注目すべきは「ゲーム障害」という疾病の存在を認めたことです。
その定義として、『①ゲームをする時間や頻度を制御できない。②ゲームが他の関心ごとに優先する③問題が起きてもゲームを続ける④個人、家庭、学業、仕事などに重大な支障が出ている の4つが12か月以上続く場合にゲーム障害とする』
勿論ゲーム業界等からこの定義に対し反論もあるようです。
以下、私見。
この10年、ゲームについては外来で相談を受ける事が多々あります。多いのはケジメがつかなくなったお子さんの例です。具体的には、診察中でも!ゲームをしている、しようとする。また深夜までする。止めさせようとすると怒る。隠れてする等です。先ほどの診断基準で、①②に相当します。
保護者に聞くと「家では時間を決めているから、よそで友達の家でやっているようです。先方に迷惑がかかるから、つい、家でやる事を許してしまう」というような返事が返ってきます。深刻な例は、「不登校」や「引きこもり」の初期と思われる例にゲームが関与してくる場合です。つまり診断基準③④に相当する行動が増えてきた場合です。「不登校」や「引きこもり」と「ゲーム」を考慮した場合、卵と鶏ではありませんがどちらが先かわからない事例も経験します。
私の個人的経験では、不登校の子どもは家で退屈させないといけないと思っています。無気力な時期は様子を見ますが、回復期に入った子どもは退屈させ、子どもなりに考えさせ(内省)、自分で結論を出すのを待ちます。こんな時期にゲームがあるとせっかくの大事な時期が消えてしまいます。
当然グレーゾーンのお子さんも多くおられます。こどもは当然未熟性や経験の少なさから時間的に近々の課題を優先しますから、当然、診断基準の項目を満たしやすくなります。
「病気」の治療の原則は、予防と早期発見と早期治療です。予防は当然「買い与えない」ですが、実際は、学校の友人関係、家庭の事情など、そんな単純なものではなさそうです。しかし努力はしてください。
早期発見ですが、ご家庭でルールを決め、それが守れなくなった時が「始まり」と言えます。守れなかった時どうするかを購入前に子どもと決めておくように助言しています。その場合、「この規則は誰か権威者(校長先生、親戚の怖いおじさん、医師、要は保護者も子どもも認めている権威者)が決めたもので、保護者(お母さん)はその指示通りにしている」という構図にしておくと、母子関係の緊張の緩和が期待できます。この方法は低学年の時は有効ですが、高学年になると無力になってきます。しかし多くは受験、クラブ活動、他で時間的余裕がなくなり、③④を満たす子どもは少なくなるように思います(外来で相談を受けません)。
いずれにせよ、子どものこの時期は、良い習慣を身につける(良き習慣は人格を形成する)、運動をする(敏捷性、持久力、社会生活、上下関係:先輩後輩などを養い、鍛える)、絵本の読み聞かせ(語彙を増やす、情感を養うなど)や読書(語彙を増やす、考える、推理する、想像する、共感する等々)に時間を割いていただきたい時期で、人生の先輩として、ゲームに多くの時間を使うなんて、勿体無いなーと思ってしまいます。